
臨床心理士っちゅーもの
現在、教育・医療・福祉などの現場で心理学を生かす資格としてもっとも注目されているのが「臨床心理士」である。主たる仕事は
1.心理相談(カウンセリング)
2.心理査定(心理検査、心理テスト)
3.地域援助(地域・学校・職場などへのコンサルテーション)
4.研究
「カウンセラー」「心理相談員」など様々な呼ばれかたをされていた名称を「臨床心理士」と統一していき、一定の技能を保障することを目指す。これは日本心理臨床学会を始めとする16の学会で協同してつくった学会資格であって、国家資格ではない。よって今後、この資格のメリットは変化するであろう。というのは、他の資格がでてくるとか、チマタで囁かれている、「医療心理士」が国家資格化される可能性があるからである。
また、臨床心理士は少年犯罪やいじめ、学級崩壊などに対応するためにスクールカウンセラーの必要性が高まってきたことを受け、その養成が急務となったことが背景にある。つまり、臨床心理士養成の一番の目的はスクールカウンセラーの全校配置のためなのである。(著書「スクールカウンセラー」村山正治 参照)
臨床心理士取得への道
とりあえずこの資格をとろうと思っている方に説明しましょう。「臨床心理士」の資格を取得するためには以下の基準を満たさなくてはなりません。
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a. |
臨床心理士養成に関する指定大学院、臨床心理学専攻(コース・領域)を修了し、所定の要件を充たすもの(修了年度により、その受験資格が異なるので詳細は当該年度の受験要項を必ず参照すること)。 |
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b. |
学校教育法に基づく大学院研究科において、心理学を専攻する博士課程前期課程又は修士課程を修了後1年以上の心理臨床経験を有する者。 ※最終受験可能者・・・平成15年3月31日までに修了したもの ※最終受験年度・・・平成18年まで受験可能 |
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c. |
学校教育法に基づく大学院研究科において、心理学隣接諸科学を専攻する博士課程前期課程又は修士課程を修了後2年以上の心理臨床経験を有する者。 ※最終受験可能者・・・平成14年3月31日までに修了しているもの ※最終受験年度・・・平成18年まで受験可能 |
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d. |
諸外国で上記1又は2号のいずれかと同等以上の教育歴及び2年以上の心理臨床経験を有する者。
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e. |
医師免許取得者で、取得後2年以上の心理臨床経験を有する者。 |
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f. |
学校教育法に基づく4年制大学学部において心理学又は心理学隣接諸科学を専攻し卒業後5年以上の心理臨床経験を有する者。 ※最終受験可能者・・・平成17年8月31日までに5年間臨床経験を積んだもの ※平成17年まで受験可能 |
というわけで、今年度大学を卒業した人からは「臨床心理士指定校」を修了しなくては臨床心理士は取得できないということになります。無論、海外の大学院を修了するという手もありますが。
上記の要件を満たすものが毎年秋に行われる臨床心理士の資格認定試験を合格することで
「臨床心理士」の資格が与えられます。ちなみにこの資格を維持するためには5年に一度資格更新をしなくてはいけません。5年間の間に研修会に参加したり学会で発表したりと、維持するのは時間とお金がかかります。しかし、このようにして研鑚していくのはなかなか良いアイデアだとは思います。臨床心理士試験の合格率は6割〜7割程度です。
臨床心理士という資格の危うさ
信州大学教育学部の守教授はHPの中で「臨床心理士を取得するメリットを良く考えて欲しい」と大学院志望者に述べている(信州大学ホームページ参照のことhttp://zenkoji.shinshu-u.ac.jp/guide-shitei.html)。国家資格化の見通しも不明瞭であるこの資格を取得し、食べていこうとするのはややリスキーな選択かもしれないと私は思っている。しかし、文部科学省管轄の団体による資格であるため、教育関係で仕事(スクールカウンセラーなど。非常勤が主かもしれない)をするのにはこの資格が生きてくると私は思っている。医療系の仕事では先に述べた「医療心理士」の国家資格化が大きな壁になるであろう。
また、毎年臨床心理士の指定校が出来てきている。現在は64校が指定されているが、心理学バブルの現在、生き残りをかけた私立大学を中心にこれからますます指定校を目指していくであろう。ただでさえ常勤の仕事などほとんど無いのに臨床心理士だけたくさん増えれば需要と供給のアンバランスが起こるのは必死で、仕事につけない臨床心理士も数多く出てくるのではないか。理系の院と違い、心理専攻の院をでてしまえば企業への就職にも有利とは言いがたく、そのあたりのメリット、デメリットをよく考える必要がある。
(指定校一覧についてはhttp://www4.ocn.ne.jp/~jcbcp/b_in.htmlを参照のこと)
それでも臨床心理士を目指す人へ
今後、大学を出て臨床心理士になろうと考えている人は、臨床心理士指定校を修了しなくてはならない。指定校には1種・2種が分かれていて、1種は実務経験なしですぐに臨床心理士の受験が出来る。つまり卒業した年の秋にある試験を受けられる。2種は実務経験を1年積んだ後(ボランティアでは駄目。一定の勤務時間、出勤日数、スーパーバイズ経験などが必要だという)、受験資格が得られるというものである。私が思うには,これだけ心理職が無い今、2種指定校では終了後の実務経験先の確保をしているところがどれくらいあるか分からないことを考えるとやや不安である。2種指定校には臨床心理士の受験資格が得られるような、修了後の配慮も必要であろう。
医療心理士(会議により「医療・保健心理士」の名称になるとのこと)について
11月8日更新(勉強しなおしました)
臨床心理士は文部科学省管轄の団体の資格。医療・保健心理士は厚生労働省をバックに全心協が推す資格。
臨床心理士の国家資格化が遅れている背景には日本医師会の反対があるといわれている。臨床心理業務には医行為が含まれると医師会は考えるのでこの分野に限定した専門性を期待するからである。臨床心理士は大学院修了者に受験資格を与えることによって医師と同格の学歴を持たせようとしている。そうすることで医師の下で働くのではなく、専門家として独自に、そして時に連携しながら利用現場における臨床心理業務をしていきたいと考えている。
一般的に医療・保健心理士の情報はあいまいで、「臨床心理士」VS「医療・保健心理士」のように言われがちだが、今はとにかく心理士の国家資格を作るという考えでは一致している。単なる厚生労働省と文部科学省との対立図式ではない。(詳しくはhttp://www.onyx.dti.ne.jp/~psycho/report01.htm参照)
厚生科学研究「臨床心理技術者の資格のあり方に関する研究」という名目で研究班が活動し、医療・保健心理士は検討されている。
研究班のメンバーは次のような方々である
分担研究者 鈴木二郎(国際医療福祉大) 班員*東洋(日本心理学会)
荒田寛(日本精神保健福祉士協会)
岡谷恵子(日本看護協会)
*黒川由紀子(老年学研究所)
*坂野雄二(日本心身医学会) 谷野亮爾(日本精神病院協会)
樋口美佐子(全国児童相談所心理判定員協議会)
松尾宣武(慶應義塾大学) 穂積登(東京精神科診療所協会)
三村孝一(日本精神病院協会) 宮脇稔(全国保健医療福祉心理職能協会)
山崎晃資(日本児童青年精神医学会)
*平成13年度から
厚生労働省精神保健福祉課課長 松本義幸 同課社会復帰対策専門官 大沢英司
オブザーバー文部科学省担当官
○この研究班の会議における流れを確認する。
我が国の社会情勢などから、人びとの心の安定、自立を考え、心の病を癒し、社会復帰を可能にして、共に幸せに暮らせるように援助する専門家が、大いに要請されている。これまではそうした役目を、精神科医を主として、それに加えて精神保健福祉士や、保健師、看護師等専門家が協力しておこなっていた。現代は社会の変化や複雑化によってさらに臨床心理学の専門家が緊急の問題として必要とされ、国家資格の重要性が認識されるに至った。この点では、研究班全員の意見は一致した。
ではどのようなことが争点なのだろうか。私の調べた範囲ではは大きく分けると以下のようになる。
争点1 医療分野に限定した国家資格であるということ
○全心協をはじめとする医療分野限定の国家資格化推進派の意見
→医療すべての領域にわたる業務と、関係する 対象の複雑さを考慮すると一律の資格にすることは不可能に近いため限定する必要がある。
→医療現場に限定するということは、教育、福祉などの分野での国家資格化も想定している。
○河合隼雄をはじめとする臨床心理士会の領域非限定の国家資格推進派の意見
→この資格が我が国唯一の心理専門職の国家資格とると、医療以外の場に活動するさまざまな心理専門職や、さまざまなカウンセラーが質の保証のないままとなり、国民が選択できる基準がない現状が改善されない。(医療領域以外でのメリットが 何もないということなのだろう)
→国家資格化は各省庁に対し、統合の方向に進ませるよう指導がなされている。もし医療現場限定といえども国家資格が出来てしまえば、教育や福祉などの領域での類似の国家資格は困難に追い込まれる可能性が高い。
○この研究班の性質上から
→厚生労働省の委託で組織された研究班では、横断的な資格化は検討範囲外である
争点2 臨床心理業務と医行為の関係
○全心協をはじめとする医療分野限定の国家資格化推進派の意見
→@医療保健施設における業務には医行為(医師の医学的判断。および技術をもってするのでなければ人体に危害をおよぼし、または及ぼすおそれのある行為)に含まれるものがある。(なんらかの心身の障害や疾病を有するものを対象にした場合の業務は医行為に含まれる)
B @からチーム医療の一員である場合は医師の指示に従う。(医事法制から、医 行為は医師の指示に従わなければならないから)
まとめ
私自身、医療・保健心理士の国家資格が早く出来て欲しいとは思います。理想としては細分化は避けたほうがいいが、教育、福祉、等の分野において国家資格を作っていくべきだと思う。
ただし、もし医療・保健心理士ができたら臨床心理士会のいうように臨床心理学の独自性を持たせてほしい。そうすることで専門性が保証されることでチーム医療が可能になり、精神科医だけのよりも幅広くサービスを提供する可能性を秘めているからだ。早く世間に国家資格としての裏づけのある心理職を誕生させて欲しいし、そうすることによって「心理学」という分野にたいする理解や関心ももっと深まると思う。しかし、医療・保健心理士の受験資格案をみるとこの臨床心理士会の意見には矛盾が生じる。受験資格案は以下のとおり。
学歴としては
○4年制大学を卒業し、原則的には大学において所定の心理学諸科目を履修、単 位取得すること(学部、コースは限定しない)。さらに、専門課程修学として、大学院において臨床系心理学の修士課程(医療・保健関係法規、精神医学、小児科学の基本的科目を含む)修了。あるいは指定された医療・保健関係施設における3年間の研修が必要とされています。
○受験に際しては、さらに一年間の臨床実習が必要とされ、初めて受験資
格を得るというものです
このようになっているので、医療・保健関係施設での研修者を考えると現場で「臨床心理学」について専門的に学ぶことになるのだろう。臨床心理士会が「臨床心理学の独自性」とうたうのならば、この研修コースを選んだ人に対して「臨床心理学」をしっかりと学ばせることを徹底しなければならない。しかし、医療・福祉関係施設での実習による受験資格取得の道を選んだ人は医療現場で研修するのに、立場の弱い研修生は臨床心理学の独自性を主張できるのだろうか。研究班の会議における、受験資格案において、研究報告書では一般の心理学課程を何らかの形で履修することが望ましいという全員の意見であった」とある。臨床心理士会が「臨床心理学の独自性」を叫ぶのなら、受験資格案についてもっと言及する必要があるし、高い専門性を保証しなければ「臨床心理学の独自性」を認識できる心理士が育たないのではないかと思う。
臨床心理士会らがなぜ「臨床心理学の独自性」にこだわるのか。その理由の1つは彼らが「臨床心理学」という学問を日本で育てた自負があるだろう。もし国家資格という裏づけのある、対人心理職において「臨床心理学」という学問がないがしろにされれば「臨床心理学」の今後の発展に悪影響が出かねないと考えるのではないか。もっともっと育てていかねばならないからこそ、この学問をアピールしなくてならないのだと思う。そのために進めてきた「臨床心理士」。養成システムも固め、「さぁ」というところでこの国家資格が出来てしまえば、職業として望みのあるこの資格に多くの人が流れてしまい、衰退してしまう危険性があるからだと思う。
受験資格のことで少し。もしこの資格ができて、この受験資格案でいくのだとしたら私は大学院卒より、現場で研修をした人のほうが就職率が良くなると思うな。
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