btml02.gifテラピーめーる2-1 温めるべきか冷やすべきか


 「温めた方がいいんですか、冷やした方がいいんですか」

 こういった質問を毎日のようにうかがいます。
 簡単そうな質問ですが、なかなか奥が深く、軽々しく答えられない部分もあります。

 打撲や捻挫なら、答えは簡単。
 傷めてすぐは冷やして下さい。(冷罨法クライオテラピー

 激しい運動で負担のかかったところ(例えばランニングをした直後の足の裏とか、投球をした直後の指先や肩)も冷やして下さい。

 腹部や冷えた手足などは、感染や外傷がないのなら、温める方(温罨法・がきっと楽でしょう。

 軽い肩こりくらいなら、気持ちのいい方で、どちらでもかまいません。
温めても血行がよくなりますし、冷やしても、体が体温を上げようとする仕組みが働いて、血行がよくなります。
 ただし、やけどや凍傷にはくれぐれも気をつけて下さいね。

 答えるのが難しいのは、例えば「寝違えました」とか「ぎっくり腰です」といって来られたときです。

 ただ単に筋肉が冷やされて痛みが出ているときは、温めてあげるとよくなります。冷やすと逆効果だったりします。

 ところが体の中の方で、靱帯が伸びていたり、関節の軟骨が傷んでいたり、椎間板ヘルニア*が潜んでいることがあります。
 こんなときに温めると、ますます痛くなることがあります。
 「風呂で温めたら余計に痛くなりました」といわれるときがそうです。

*椎間板ヘルニアというのは、背骨と背骨の間でクッション材の働きをしている軟骨(椎間板)が周囲に飛び出すこと(ヘルニア)です。飛び出した軟骨によって、そばを通る神経が圧迫されます。

 もし靱帯が伸ばされていれば、細かい血管が切れ、炎症が起きています。
 そこを温めると余計に内出血し、炎症がひどくなります。

 また、軟骨は水分が多く、膨張しやすい性質を持っています。
 関節の軟骨や椎間板が傷んで腫れていれば、そこを温めると余計に膨張し、関節がうずいたり、神経を圧迫したりします。

 とはいうものの、関節の軟骨や椎間板の損傷がMRI(磁気共鳴映像法、レントゲンでは映らない軟骨や筋肉、血管、脊髄を映し出すことができる)などの検査で明らかな人でも、温めた方が楽だという人もいます。
 表面の筋肉の緊張がほぐれるからかもしれません。

 体質や好みも、考えなければなりません。

 学説ですら、同じ症状に対して、温めるべきたという説と冷やすべきだという説に分かれていたりします(リウマチなど)。

 関節は冷やしながら、その関節を動かす筋肉は温めるという方法を使うこともあり、それが合う患者さんもおられます。

 交感神経が過敏になっているときは、温めたり冷やしたり両方するのがいいといわれています。

 捻挫や打撲の場合でも、症状が改善されてきたら、冷やす方から温める方に切り替えた方が早く治ります。
 いつ切り替えるかは、その人の状態をよくみて判断しなければなりません。

 このように、温めるとか冷やすとかいっても、単純ではありません。

 例えば次のようなところは、温めると症状が悪化し、予後がわるくなることがあります。

 1 赤くなったり、熱をもったりしているところ(感染など)。

 2 腫れたり、水や不純物がたまっている関節および腱鞘(変形性関節症、リウマチ、痛風石灰性腱炎など)。

 3 限られた区画になっていて、内側の圧力が高くなっているところ(腕や脚のコンパートメント症候群など)。

 4 何かが腫れたり飛び出したりして狭くなっている神経の通り道(椎間板ヘルニアなど)。
 5 高血圧や高熱のときの頭部。

 これらは冷やすと奏功するかもしれませんが、冷やす以外の処置も必要です。

 温めると痛みやしびれ、不快感が現れるときとか、今までにないような痛みが出て、温めるべきか冷やすべきかわからないときは、専門家にみてもらいましょう。

 たまに、冷やし過ぎの人や温め過ぎの人を見かけます。
発熱のあるときは持続的に冷やせばいいですが、痛みだけなら、5分から15分くらい冷やすのがいいと思います。

 温めるのも5分から15分くらいで充分血流がよくなります。冷えているからといって、長時間温めっぱなしにすると、後からかえって体温の低下を招くことがあります。

 温めたり冷やしたりは、1日に1回でもいいし数回されてもよいでしょう。

 「冷湿布がいいんですか、温湿布がいいんですか」という質問も多いですが、これはまたいずれ。
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◆謝辞◆イラストは畑中美樹さん作です。ありがとう。